タックロールを入れて、シートを張替えしたい
そう思ったことはありませんか?
シートカスタムの中でも、タックロールは代表的な加工です。
タックロールが入るだけで、シートの見た目は『ガラリ』とかわります。
【この記事では】
☑️タックロールシートとは
☑️タックロールのメリット・デメリット
について解説していきます。
すでに張替えた人も、これから張替える人も知っておきたい内容です。
わたしはこれまで、張替えをしたシートを数多く見てきました。
同じシート形状でも
タック幅や、厚みによって見た目は変化します。
これが
それが、タックロールの良さなのです。
しかし
タックロールには問題もあるのです。
【この記事の執筆者】
自己紹介と実績
☑️現役のバイクシート職人
みなさんにとって最高のシートをつくるために日々精進
☑️この道15年のキャリア
過去累計70000以上の加工実績
今現在も1年で5000個ものシートを加工し続ける
☑️どんな形でもつくりだす技術
アンコ加工は業界でも右に出るものなし
NAN^2(@orenobikeseat)
結論から言うと
見た目ばかり優先するのは危険です。
理由は
注意しなくてはいけないことがあるからです。
具体的には
防水性が低下したり、長時間の使用でシワやヨレを引き起こすなどがあります。
つまり
シートの形状や、えらぶ生地よっては仕上がりに悪影響がでてしまうのです。
メリット・デメリットを知ることで、あなたにとって最適な加工か考えましょう。
バイクシートの張替えサイクルは2年〜3年。
その期間、愛着をもって使用できるシートづくりをしましょう。
今回の記事が、あなたのシートづくりの参考になればと思います。
それではいってみましょう。
タックロールシートとは
そもそも…タックロールってどんな加工なの?
そう思っている人もいるはずです。
タックロールとは
洋裁で、一定の間隔をおいて布をつまんで縫った【ヒダ】がはいった部分をいいます。
※【ヒダ】衣類などの、細長い折り目。そのように見えるもの。
では
バイクシートではどうなのか?
わかりやすく解説します。
タックロールの違い
バイクシートでは
- 【ウェルダー】高周波による型押しによって、できあがるライン
- 【ミシン目】ミシンで縫い込むことによって、できあがるライン
以上の加工をしたものがタックロールとよばれます。
純正シートの多くは、ウェルダーにるタックロールになっています。
高周波ウェルダーとは、高周波ウェルダー機器を用いて熱を発生させることによって、溶剤部を判液相状態までとかしてつなぎ合わせる加工をいいます。
みなさんが、純正シートなどでよく見るダイヤタックや型押しの模様もウェルダーによる加工です。
ここ数年でタックロールが入ったシートもふえました。
その理由としては
やはり見栄えが良くなることではないでしょうか。
みなさんも
バイクを購入するときに、シートを見て思ったことはありませんか?
純正だけど、カッコいい!
そうなんです。
シートがカッコいいと、車体がさらにカッコよく見えるのです。
ちなみに
【バイク購入における決め手】についてのアンケート調査より
バイクを購入するときに、価格以外で重視したポイントは?
の質問に対し
- デザイン 55%
- 安全面 8%
- 機能面 28%
- 燃費 9%
という回答がでています。
やはり
見た目をふくめ、デザイン性が大事だということがわかります。
タックロールが入ったシートといえば、みなさんも見たことがあるのではないでしょうか?
『KAWASAKI Z900RS』
いわずとしれた大人気車種です。
Z900RSにも、ウェルダー(高周波による型押し)のタックロールが使われています。
じつは…
さらにタックロールの、見栄え良くしているポイントがあるのです。
わかりますか?
それは
『グルっ』と回りを切り抜いて、中にタックロールが入っているように見せているところです。
普通のタックロールの入り方とは違いますよね。
ここが大きなポイントになっています。
この技法は、くり抜き加工といわれ純正でも限られたシートにしか使われていません。
一方
張替えの場合、タックロールは等間隔に直線ラインが縫われています。
もともとタックをふくむデザインが入っていなかったのであれば、見栄えは一変するはずです。
タックロールを入れて張替えると
シートカスタムは加工の幅が広く、自由度の高いところが人気の理由。
つまり
シート表面にタックロールが入ることによって、シート自体はカッコよくなり。
さらには
車体の存在感もアップするのです。
タックロールの特徴
バイクシートのタックロールの特徴は『モコモコ』とした形状です。
『モコモコ』感がどれだけ出ているか。
それが
タックロールの見栄えに大きく影響します。
ですが
この『モコモコ』な起伏は、どうやってつくられているか知っていますか?
これって、アンコでつくっているんじゃないんだ?
そう思った人もいるはずです。
では
『モコモコ』の正体を説明しましょう。
それは
ウレタン素材の厚みによって『モコモコ』ができるのです。
タックロールの厚みのつくりかたは、以下の通りです。
- 【ウェルダー】表生地とウレタンを圧着
- 【ミシン目】表生地とウレタンを縫い込む
これだけではなく
タックロールは表生地と【基布(きふ)】とよばれるものにウレタンをはさんでつくられます。
※【基布】紡績機械(ミシン)で針布の針を植えるために、はり合わせる布。
ウェルダータックロールは
黒い裏基布とともに圧着されています。
ミシン目のタックロールは
ウレタンを一緒にを縫い込むことによって、ふくらみが出ます。
それぞれの違いはわかりましたか?
でも、ウェルダーのタックロールは『モコモコ』していないような気が…
そう気づくことができれば、シートがよく見ている証拠です。
じつは
2つのタックロールの大きな差は、ここにあるのです。
結論から言うと
タックロールのつくりかたのちがいによって、仕上がりの厚みが変わるのです。
単純にウレタンの量を増せば、『モコモコ』の起伏がでます。
ですが
工法によって、はさむことができるウレタンの限界値がかわってしまうのです。
ウェルダータックロールの厚みは5mmが限界値になってしまいます。
ウレタンがますと、高周波の熱がつたわらずにつなぎ合わせができなくなってしまうのです。
もちろんミシンによる縫い込みも、限界値はあります。
張替え業者で使用されるミシンは、工業用ミシンが多く使われているので多少の厚みであれば問題ありません。
20mmまでの厚みであれば、縫い込みは可能でしょう。
※詳しい厚みにつきましては、依頼する業者に確認してください。
つまり
純正と張替えでは単純に見ても、15mmの差がでてしまいます。
これが『モコモコ』感の差になります。
タックロールのメリット・デメリット
ここではシートを張替えをしたときの、メリット・デメリットを詳しく解説します。
シートカスタムを考えている人は参考にしてみてください。
メリット
やっぱり見た目がよくなることでしょ
デザインがシンプルな純正シート。
そこから見た目が『ガラリ』とかわることは十分なメリットといえます。
見た目以外には
- オリジナリティが出せる
- クション性が良くなる
などがあります。
オリジナリティが出せる
タックロールは横に入ったラインが基本ですが、タックにはさらに種類があります。
- よこタック
- たてたっく
- ダイヤタック
- デザインタック
自分の希望の形を、希望の大きさで入れることができることも大きなメリットと考えます。
まさに
シートカスタムの王道ではないでしょうか。
クッション性がよくなる
ごくわずかですが、クッション性が良くなります。
理由は
タックの『モコモコ』を出すために仕込まれたウレタンがクッションになるからです。
仕込まれるウレタンの量が多ければ多いほど『モコモコ』感は増し『フカフカ』感もあがります。
ですが…
これはあくまでも、張替えの初期でのみということを知っておきましょう。
そして
長期間の使用でウレタンがつぶれる、いわゆるヘタリという現象がおきてしまいます。
アンコが硬いシートにおいては、効果は望めません。
またがったときの荷重によって、土台の硬さがつたわってしまいます。
デメリット
結論から言うと
見た目を重視することだけに、重点をおかないようにしましょう。
理由は
見た目以上に、気をつけなければいけないことが多いからです。
その内容は
- 防水性が悪くなる
- シワやヨレがでやすい
- 使用劣化が早い
- 外敵被害を受けやすい
- 加工費があがる
などがあげられます。
防水性が悪くなる
縫われているタックのラインには、無数のミシン目の穴があいています。
このすべての穴に水が染み込む可能性があるのです。
さらに
水量にもよりますが、生地の表面からも水は染み込んでいきます。
結果的に
張替え業者による防水処理では、タックロール部分への水の染み込みは防ぐことができません。
業者が行っている防水処理の信頼性は、低いものと理解しておきましょう。
シワやヨレがでやすい
生地の張りが弱いことが原因で、シワやヨレが発生します。
しかし
シート生地はタックロール加工をすることによって、伸びにくくなってしまいます。
とくに
アンコの高低差がある箇所や、ベースの湾曲部分にタックロールがかかる場合は注意が必要です。
使用劣化が早い
さまざまな状況下において、シート上でお尻を動かすはずです。
- 乗車時のポジション設定
- 停車時の足のおろし
- カーブでのお尻のずらし
- 速度変化の際における体重移動
ささいな動きから、大きな動きまで。
その動きによってシート表面はスレていくのです。
タックロールシートの場合、生地とともに縫い糸もスレていきます。
その結果
糸目が切れてしまい、そこからほつれてくるのです。
縫い糸の耐久性は、生地に使われるビニールレザーとくらべ低いことを知っておきましょう。
外敵被害を受けやすい
外出時に気をつけることといえば盗難被害ではないでしょうか。
セキュリティを万全にしたつもりが…
そ、そんな…
絶対に見たくない光景です。
しかし
あなたが思っている以上に、タックロールシートは目を引くのです。
バイクから離れる際は、シートにも注意しなくてはなりません。
加工費があがる
通常の張替えに一手間かかることによって、加工費がかかってしまいます。
加工費は、業者によってさまざまです。
シートの大きさや、タックロールの本数で値段が変わるので注意しましょう。
まとめ
タックロールは、シートカスタムの中でも代表的な加工になります。
なぜなら
タックロールが入ると、シートの見た目は『ガラリ』と変わるからです。
シートカスタムにおける、タックロール加工の良さは
- 幅
- 厚み
を自由に変えることができることではないでしょうか。
しかし
見た目ばかり優先することは危険です。
理由は
見た目以上に、注意しなくてはいけないことがあるからです。
具体的には
- 防水性が悪くなる
- シワやヨレがでやすい
- 使用劣化が早い
- 外敵被害を受けやすい
- 加工費があがる
などがあります。
バイクシートのタックロールは
- 【ウェルダー】高周波による型押し
- 【ミシン目】ミシンによる縫い込み
によってラインがつくられます。
純正シートの多くはウェルダーによるタックロール。
張替え業者は縫い目によるタックロールを主として加工しています。
タックロールの特徴は『モコモコ』とした形状。
この『モコモコ』感がどれだけあるかが、見栄えに大きく影響します。
なお
『モコモコ』の正体は、ウレタンによってつくりだされます。
しかし
工法のちがいによって、仕上がりが大きく変わるので注意が必要です。
以上を十分に知っておけば、あなたにとって最高のタックロールシートをつくることができでしょう。
長い期間シートをつかい続けるには、適切なメンテナンスをする必要があります。
汚れを放置したままにすると、生地はもとよりタックロールを縫っている糸にも汚れは染みこんでいきます。
シートメンテナンスの詳しい方法は、下の記事をご覧ください。
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